最新情報
モンゴルアート
2019-06-20 00:24

モンゴル美術は『美』という概念が地上に降りてきて以来、独特な遊牧生活を特徴にして、進化し続けてきました。モンゴル画家にしか描けない遠景、色、人、動物などを遊牧民の視点から描いた3500以上の作品がモンゴルモダンアートギャラリーに展示されています。その中で五つの絵画を政府が『貴重な遺産』と名付けました。そこで本記事では『貴重な遺産』となった五つの画をご紹介します。

 

バラダブ シャラブ 『レーニン』(1922年、モンゴルモダンアートギャラリー)
  1. バラダブ シャラブはモンゴル最後の君主、ボグド・ハーン(1869-1924)の画家だった。1924年にソ連に続く世界で二番目の社会主義国家になったモンゴル(モンゴル人共和国当時)にレーニン主義が強く入っていたころだ。この肖像をシャラブに描くよう依頼したのが革命家で政治家のスフバートルであり、当時、お坊さんだったシャラブにレーニンのモノクロ写真を渡したそうだ。シャラブは仏教の教えを身につけて生活していたので、欧米人が着るスーツやジャケットについて詳しく知らなかったといわれている。その証拠か、この絵画をよく見ればネクタイが左側に傾いている事がわかる。レーニンの肖像が完成した後、スフバートルがシャラブになぜ地球儀を描いたかを聞いた時、シャラブは『皆さんがレーニンを「先生」とおしゃっていましたので、世界中の人々の先生でもあるのかなとおもった』と答えたそうだ。肖像の両側にある赤い旗は革命の赤でもあり、お坊さんが身に着ける衣服の色でもある。この画はモンゴル近代アートでも最も大切にされている画で、社会主義国家になった国々のなかでもモンゴルが最初にレーニンの肖像画を描いたといわれている。
    ゲレグ オドン 『仕事の後』(1954年、モンゴルモダンアートギャラリー)
  2. 遊牧生活を何百年も続けていたモンゴルは、1950年から農業をやり始めてきた。当時描かれている多くの画は自然か生活の画であり、生活の画は人々に社会主義の影響を与えるストーリーを持っている。この画の左側に座り、鼻を触っている少年は国から与えられた仕事をさぼり、お酒を飲んで、あばれた直後だ。ギャラリーに行って実物の絵画をみれば、彼のデールの中に隠しているお酒の瓶がよく見える。そして彼を責める人々。しかしここで面白いのが左側、彼の後ろに座っている男の人だけが彼を責めず、若い人も誤うこともあるだろうと思っているのが目の表情でわかる。もう一つ面白いのは白いシャツを着た男の人である。農場で働く時白シャツを着る人はいないだろう。その上、皆が話している事に興味を示さず、新聞を読んでいるのはどうしてだろう。彼はオドン画家自身であり、当時農業や遊牧生活をしている一方、知識人も増えていることを表したそうだ。テントの中にあるキャベツ、机の上にあるパン、お茶、コップ、人々の着た服などを見れば1950年代のモンゴルが目の前によみがえるような画だ。
    ニャムオソル ツルテム 『草原の家』(1955年、モンゴルモダンアートギャラリー)
  3. この絵画が遠景画だという事は見ればすぐわかる。古風モンゴル画の特徴は遠景がなく、どんなに広い所を描いても上からみているように見える特徴を持っている。しかしこの画は終わりの見えない草原を人の目線で描いたのだ。どこまでも続く道、その上を走る車、そしてゲル、ゲルの近くにいる人々はきっと賑やかに話して、笑い声が聞こえているだろうと予想できる。画の右側に黒い雲、雨雲か、それともただの雲なのか。画の中心にあるラグダ。きっとこの画はゴビをモデルにして描いた画だ。何百年もこの視線で自然を見てきたモンゴル人は、これから何百年間、この風景を見続ける事ができるだろうか。
    ウルジン ヤダムスレン 『馬頭琴を弾くおじいさん』(1955年、モンゴルモダンアートギャラリー)
  4. モンゴルが社会主義国を歩むようになって、伝統文化がすこし忘れられていた時代もあった。それを反対にヤダムスレンがモンゴル伝統楽器、馬頭琴を弾くおじいさんを描いたのではないかと評論家の中に議論がおきている。この絵に描かれている模様、柄すべてがモンゴル伝統であり、おじいさんがモンゴル伝統の詩を馬頭琴のメロディーに合わせてよみ終えたか、あるいはこれから読むところを描いたかと思われる。
    オチル ツェベグジャブ 『種馬の戦い』(1958年、モンゴルモダンアートギャラリー)
  5.  画を実際にみればサイズ感が巨大で本当に種馬の戦いをみているようだ。ツェベグジャブはこの画を15年もかけ、完成させた。ツェベグジャブはどんな画を描く時もよく考え、描いている動物の解剖などについて研究もしていた。『種馬の戦い』という画を描く時も15年間馬の解剖、筋肉などをよく調べ、時には田舎に行って本当に馬を戦わせていたこともあったそうだ。群れを守ろうとして戦っている、茶色の馬とベージュ色の馬の戦い。左側の群れは茶色い馬の群れだという事を一番端っこに戦いを振り向いて見ている仔馬の色からわかる。そしてベージュ色の馬の群れは少し離れたところで何も知らずに草を食べているのが見える。ベージュ色の馬の群れの方から馬にのった男の人が戦いを止めに来ているように見えるが、恐ろしいと思ってか、少し後ろに馬を引っ張っているのもみえる。

 以上五つの画はモンゴルの独特な特徴、ストーリーを持っていて、モダンアート界でも貴重な役割を果たした画です。モンゴルの若い世代やモンゴルに訪れる外国人の方々にモンゴルモダンアートギャラリーに足を運んでいただければ、画家達にとっても喜ばしい事だと思います。