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ガニェの9事象
2021-01-08 16:05

こんにちは。モンゴル日本人材開発センターの三本です。私は日本語教師ですが、学習者に日本語を教えるだけでなく、日本語の先生に教え方を教えるコースも担当しています。今日は、誰かに何かを教えるときに役立つ一般的なステップ:「ガニェの9事象(Nine steps of instruction)」について皆さんにお伝えしたいと思います。

教師はどのように教えると学習者を支援できるのでしょうか?

教師は学習者の学習を助けるためにいろいろなことをしています。ビデオや写真を見せる、質問する、ヒントを与える、詳しく説明する、練習を用意する、ほめる、間違いを指摘する、宿題を出すなどなど。これらの学習を助けるための教師の行動は数多くありますが、アメリカ人教育心理学者のガニェ(Robert M. Gagne)はその行動を9つのグループに整理しました。そして、一般的な授業の流れ(「導入部分」「展開部分」「まとめ部分」)に沿って並べました。以下が「ガニェの9事象」です。

「ガニェの9事象(Nine steps of instruction)」

  • 学習者の注意を引く
  • 授業の目標を知らせる
  • 既習項目を思い出させる
  • 新しい学習項目を提供する
  • 学習方法を提供する(理解を助ける)
  • 練習の機会を提供する
  • フィードバックする
  • 学習の成果を評価する
  • 保持と転移を高める

導入部分

授業の導入部では、教える内容に注目させて興味を持たせます。例えば、内容に関連する写真やビデオを見せたり、興味深い質問をして考えさせてもいいでしょう(1.)。それから、学習の目標を知らせて、これから学ぶ内容が、学習者の仕事や生活にどのように役立つかを示します(2.)。そして、今日学ぶことに関連したこれまでの知識を思い出させます(3.)。これらの3つによって、学習者は学習内容に興味を持ち、ゴールを確認し、そこへ向かって進む心と頭の準備が出来ます。身近な例として、ある料理の作り方を子どもに教えるということで例えるなら、いきなり包丁を持たせて肉や野菜を切らせるのではなく、その料理の写真をスマホで見せて、食べたことがあるか、どんな味だったかを質問し、それが自分で作れるようになると伝えます。それから、その料理に使われている材料にはどんなものがあったか、大まかにどんな手順で作ると思うかを想像させます。ゆで卵は水から作る?お湯から作る?何分ゆでるといいと思う?

展開部分

授業のメインパートである展開部では、インプット部分とアウトプット部分に分けられます。まずインプット部分では、新しい学習内容を学習者に提供します(4.)。新しい学習内容に対して学習者は理解しようとし、教師はそれを色々な方法で助けます(5.)。例えば、繰り返しやってみせたり、注目すべきポイントを示したり、問いかけたり、ヒントを与えたり、質問に答えたり、説明したりします。導入部分で示した目標や関連知識が理解を助けることもあります。こうして、学習者は理解できないものを含んだ内容が理解できるようになります。

理解したあとで、その理解が能動的に確認できるようなアウトプット部分、つまり練習の機会が必要になります(6.)。そして、その練習に対してフィードバックを与えます。フィードバックによって学習者は自分の理解や行動が正しいかどうか知ることができます(7.)。もし、この2つを行わなかったら、学習者は自分の理解が正しいかどうかが分からないまま、また別の新しい内容を理解することになります。教師の立場からも学習者がどれぐらい理解したのかを確かめることが出来ませんから、教えにくいと思います。

この(4.5.6.7.)の流れは1つのユニットと考えられます。そして、通常1つの授業ではこのユニットが1つだけではなく、複数用意されています。より基礎的なものから応用的なものになるように並べられているはずです。「分かる」だけの状態から、練習とフィードバックによって「できる」ようになります。

まとめ部分

まとめ部分で学習の成果を評価します。評価の方法はいろいろとあります。例えば、みんなの前で短い発表をするときもあれば、グループで短いレポートを書いたりすることもできます。勉強などではなく、料理などでは実際に料理を作るということになるでしょう。そして、評価者は、教師だけでなく、学習者自身であったり、他の学習者だったり、あるいは教室の外の誰かということもあるかもしれません。学習によって何が出来るようになったかを評価を通じて知ることで学習者は満足感を得たり、新たなる課題を得たりするでしょう(8.)。

最後に学習したことを忘れないようにしたり、他の場面や話題でも使えるようにしたりします。習ったことは使わないと忘れてしまうものです。ですから、例えば宿題を出したり、テストがあると予告したり、次の授業の最初に復習を行ったりします。また学習したことが他の学習へ応用できるようにしたり、現実の問題解決にも適用できることを伝えます。「ゆで卵」を作れるようになったら、ゆで卵をきれいに切って飾った卵サラダも何かの集まりのときに作れそうですよね。語学であれば教室で勉強したことを教室の外で使ってみることを促します。FBやインスタグラムなどで夏休みの旅行について作文を書き、写真を添付して公開してもいいですね(9.)。

おわりに

「ガニエの9事象」、いかがだったでしょうか。今度学習者として何かを学ぶ機会があれば、今私がしているのは9事象のどの部分なのかを意識しながら授業を受けることでより効果的に学習出来ると思います。また何かを教える機会があれば、教案を作ったり、教材を準備したり、教え方の評価したりするときに役立つ考え方だと思います。